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大腸がんとは

大腸がんとは

大腸は消化吸収された残りの腸内容物をため、水分を吸収しながら大便にするところです。多種、多量の細菌の住みかでもあります。約2mの長さがあり、結腸と直腸肛門からなります。大腸粘膜のあるところではどこからでもがんができますが、日本人ではS状結腸と直腸が大腸がんのできやすい部位です。

年齢別にみた大腸がん(結腸・直腸・肛門がん)の罹患(りかん)率は、50歳代付近から増加し始め、高齢になるほど高くなります。

大腸がんの罹患率、死亡率はともに男性のほうが女性の約2倍と高く、結腸がんより直腸がんにおいて男女差が大きい傾向があります。

男女とも罹患数は死亡数の約2倍であり、これは大腸がんの生存率が比較的高いことと関連しています。

大腸がんの罹患率の年次推移は、男女とも1990年代前半までは増加し、その後は横ばい傾向です。また、死亡率の年次推移は、男女とも戦後から1990年代半ばまで増加し、その後漸減傾向です。

大腸がんの増加には、主として結腸がんの増加が影響しています。罹患率の国際比較では、結腸がんはハワイの日系移民が日本人より高く、欧米白人と同程度であることが知られていましたが、最近では、結腸がん・直腸がんともに、日本人はアメリカの日系移民および欧米白人とほぼ同じになっています。

大腸がんでは、直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴は、リスク要因になります。特に、家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス性大腸がん家系は、確立した大腸がんのリスク要因とされています。生活習慣では、過体重と肥満で結腸がんリスクが高くなることが確実とされています。また、飲酒や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)は、おそらく確実な大腸がんリスクとされています。

大腸がんは早い時期に発見すれば、内視鏡的切除や外科療法により完全に治すことができます。少し進んでも手術可能な時期であれば、肝臓や肺へ転移(これを遠隔転移と呼びます)しても、外科療法により完全治癒が望めます。つまり、外科療法が大変効果的です。しかし、発見が遅れれば、肺、肝臓、リンパ節や腹膜などに切除困難な転移がおこります。こうした時期では、手術に加え放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)が行われます。

症状

大腸がん

大腸がんの自覚症状は、大腸のどこに、どの程度のがんができるかによって違います。大腸のはじまりは盲腸です。頭部、つまり上に向かう部分が上行結腸、次いで横たわっている部位を横行結腸、足つまり下に向かう部分が下行結腸、S字状に曲がっている部分がS状結腸、約15cmの真っすぐな部分が直腸で、最後の肛門括約筋のあるところが肛門管です。国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター中央病院)で1990年~1995年の間に切除された1,409例の大腸がんの発生部位と頻度は、直腸534例(37.9%)、S状結腸483例(34.3%)、上行結腸146例(10.4%)、横行結腸99例(7.0%)、盲腸83例(5.9%)次いで下行結腸64例(4.5%)となっています。

がんに特徴的な症状はなく、良性疾患でもがんと類似した症状がおきます。血便、便が細くなる(便柱細少)、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状が多く、これらはS状結腸や直腸に発生したがんにおきやすい症状です。中でも血便の頻度が高く、これはがんの中心が潰瘍となり出血がおきるためです。痔と勘違いして受診が遅れることもありますので注意しましょう。がんによる血便では肛門痛がなく、暗赤色の血液が便に混じったり、ときに黒い血塊が出るなどの特徴があります。肛門から離れた盲腸がんや上行結腸がんでは血便を自覚することは少なく、貧血症状があらわれてはじめて気がつくこともあります。腸の内腔が狭くなりおこる腹痛や腹鳴、腹部膨満感や痛みを伴うしこりが初発症状のこともあります。

ときには、嘔吐などのがんによる腸閉塞症状で発見されたり、肺や肝臓の腫瘤(しゅりゅう)として大腸がんの転移が先に発見されることもあります。こうした症状で発見されるがんは進行したものです。

受診のすすめ

大腸がんは、早期であればほぼ100%近く完治しますが、一般的には自覚症状はありません。したがって、無症状の時期に発見することが重要となります。大腸がんのスクリーニング(検診)の代表的なものは、地域、職域で普及してきた大便の免疫学的潜血反応で、食事制限なく簡単に受けられる検査です。この検査が陽性でも、「大腸がんがある」ということではありませんし、逆に陰性でも「大腸がんはない」ともいえません。健康な集団の中から、大腸がんの精密検査が必要な人を拾いあげる負担の少ない最も有効な検査法です。最近では、国立がんセンター中央病院(現国立がん研究センター)で手術を受けた30%近くの方が便潜血反応で発見されています。したがって、40歳を過ぎたらこの検診を受けることをお勧めします。血液検査で腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の異常値で見つかることもあります。

がんのリスク要因・予防要因

大腸がんでは、直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴は、リスク要因になります。特に、家族性大腸腺腫症(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう)と遺伝性非ポリポーシス性大腸がんの家系は、確立した大腸がんのリスク要因とされています。生活習慣では、過体重と肥満で結腸がんリスクが高くなることが確実とされています。また、飲酒や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージ等)は、おそらく確実な大腸がんリスクとされています。

国際がん研究機構(IARC)の評価では、喫煙が大腸がんのリスク要因であるとする科学的根拠は少なからずあるものの、十分とはいえないとされています。日本人を対象にした疫学研究を系統的に総括した論文(2006年)では、喫煙習慣は、日本人では大腸がんリスクを上昇させる可能性があるとの結論に達しています。部位別の判定では、直腸がんについてはリスク上昇の可能性がある一方、結腸がんについては不十分と判定されています。

その他、ヘテロサイクリックアミンやニトロサミン等が大腸がんのリスク要因である根拠が、限定的または不十分とされています。

大腸がんの予防要因としては、運動の結腸がん予防効果が確実とされています。また、従来「確実」とされていた野菜については、IARCのレポート(2003年)での新しい評価で、「おそらく確実」と変更されました。その主な理由は、最近発表されたいくつかの大規模なコホート研究の結果、予防的な関連が認められなかったことです。また果物は、同年のIARCレポートでは、大腸がん予防の可能性があるとされています。その他、可能性あり、またはエビデンス不十分な予防要因として、葉酸(ようさん)、カルシウム、ビタミンD、食物繊維摂取等があげられています。また、非ステロイド消炎鎮痛剤(NSAIDs、アスピリンを含む)とホルモン補充療法が、リスクを減少させる要因としてあげられています。

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