公開日 2017年4月13日
徳島県指定有形文化財(建造物) 阿佐家の保存修理が完了しました
「阿佐家住宅」 県指定有形文化財(建造物)・三好市歴史的風致維持向上施設
阿佐家は平家の子孫という由緒を持ち、長らく祖谷で特別の役職を務めてきたと伝えられる。
主屋はこの地域の一般的な農家で見られるオモテにあたる部屋がなく、式台玄関を設けるなど山間の上層農家の典型例として貴重であり、屋敷林、庭園、石垣、前庭等の屋敷構えを含めて平成12年3月21日付けで徳島県の有形文化財として指定された。
主屋の建立は棟札より文久2年(1862年)と考えられる。建立後の早い時期から明治時代にかけて現在の形に整えられたが、その後も生活様式に合わせて内部の改造が順次に行われて、阿佐氏による維持管理がなされてきた。
最近では平成12年に屋根の茅葺を鉄板で養生する工事が行われている。しかし、経年による建物の変形や軸部の弛緩が進み、床組の蟻害、軒の垂下や小屋貫の折損、台風による屋根の破損等、建物全体に破損が進行しており、看過できない状況となりつつあった。このような状況のもと、徳島県をはじめとする関係機関での協議が重ねられ、根本的な保存修理を行うことが決定した。また、これと同時期に主屋を三好市の所有に切り替えて、今後の管理の万全を期すための体制が整えられた。
保存修理工事は修理方針を解体修理とし、茅葺屋根、小屋組、天井、建具、壁、床、床組、柱、造作等全てを一旦取り解いて更地の状態とし、基礎石の不陸箇所を修正したうえで、再び組み立て直した。
保存修理では部材取り外しにともなう調査により、多数の痕跡が確認でき、建立当初の姿とその後の変遷が概ね明らかになった。これにより主屋は当初の姿に復原し、一部不明箇所は痕跡を尊重しつつ、修理後の使用を考慮して整備した。
主な復原内容は
1.ジョウダンノマ、インキョマの間仕切壁の撤去。
2.柱間装置の復旧整備。
3.正面玄関の玄関浜床を復原。
4.コヒキバつし二階とコヒキバ土間を撤去し、床を復原。
5.ダイドコロ西廊下を撤去しダイドコロを旧規の規模に復原。
6.各室の畳を撤去し、床板を現した。
7.ネマ、ゲンカンを除く各室の天井を撤去。
8.インキョ北側物入れをトコに復原。
9.ロクジョウ、ロウカ間の物入れを旧規に倣い整備。
10.スイジバ、前室の床を撤去して土間に復原。
11.囲炉裏の位置を整備。
12.背面外壁に割竹を復原。
13.内部の長押を撤去。
14.本屋の寄棟屋根を入母屋屋根に復原し茅葺を現した。玄関屋根は柿葺、下屋は板葺上に銅板養生に整備した。
また、建物の耐震性能を診断した結果、耐力不足が指摘されたことから耐震補強の対策を講じた。補強は一部の土壁、板壁下地を構造用合板に置き換え、柱足元を構造用合板で固め、小屋組に鋼棒ブレースによる補強材を設置して、剛性を高めることで耐震性能を向上させた。
4月1日より外観及び内部を一般公開しています。
平家屋敷の風情を今に伝える重厚な佇まいを肌で感じてみてはいかがでしょうか。