市立三野病院のプログラム
本院は、60床の病院で救急告示病院、臨床研修指定病院(協力型)、日本リウマチ学会教育施設、日本呼吸器学会関連施設(予定)です。内科のみが常勤で、外科、整形外科は非常勤で対応している病院ですので、本院での研修というと内科が主体となります。本院は、徳島市より西に60キロメートルほど吉野川上流に遡る位置にあり、南は四国山地と北は阿讃山脈に囲まれた高齢化の進む地域ですが、職員は一丸となって地域医療を実践しています。高齢化の進む地域といえども、0歳児から100歳までの幅広い患者さんを診療する必要があり、幅広い知識と技能を必要とする総合的に診療する能力を高められるうえに、リウマチ専門医や呼吸器専門医としての技能も習得できます。さらに、一般的な訪問診療だけでなく在宅酸素療法や在宅人工呼吸器療法等の専門性の高い在宅医療を実践し、家庭復帰をめざしたリハビリテーション診療も活発に行っています。
現在の医療は大別して、予防、早期診断早期治療、高度医療に分類されると思われます。予防医学として、0歳児を含めた予防接種や公民館で地域住民に生活習慣病予防講演などが経験できます。また早期診断のための基本的な検査手技を習得し、的確な治療方針を立案できるようになります。小さな病院といっても、呼吸器膠原病(関節リウマチ)では高度専門医療も実践でき、専門医の資格も取れるようになります。
本院の大きな特徴は、医師と患者として向き合うだけでなく、地域の住民と向き合うことにより、医療行政の中での予防医学、早期診断早期治療、高度医療を実践できます。
本院では、指導医と常に連携し、地域に根差した全人格的な診療医のみならず呼吸器膠原病の専門医をめざします。本院は、大病院にない特徴として全職員の顔が見えるので自然とチーム医療が実践でき、楽しく仕事をする中で医療人としての技量を高められるうえに心豊かな生活を送ることができます。
プログラムの特徴
日常診療
- 研修は主に市立三野病院で行いますが、地域全体が研修場所と考えて差し支えありません。
- 一般外来診療と入院診療を行うことで、地域住民の方がどのような疾患で苦しんでいるか実体験できます。指導医とともに外来入院診療を続けていけば、自然と無理なく総合診療医としての診断力と疾患管理能力が育成されます。
- リウマチ膠原病外来を行いその入院診療を行えば、膠原病の診療能力を高めることができ、さらに5年間でリウマチ専門医の受験資格が自動的にとることができます。また高齢者は呼吸器疾患を患うことが多く、その外来入院診療や在宅酸素療法および在宅人工呼吸器療法などを通じ呼吸器疾患の診療能力を育成できるとともに呼吸器専門医の受験資格の経歴に組み込むことができます。
- 訪問診療で地域に出向くだけでなく、特別養護老人ホームや養護老人ホームの診療にも出向き、医療保険と介護保険の理解が進みます。
- 0歳児から高齢者までの予防接種を実施し、特定検診や一般検診などを通して予防医学の重要性を学びます。
- 一般内科医の知識技能は幅広いが浅いといわれますが、その医学知識は一般の人のそれと比べるとはるかに深いため、内科を専門としながらも保育所、小学校、中学校の校医として健診を行い、生徒や保育士などに教育講演をすることができます。また障害を持つ子供たちの学校での処遇に関して就学時指導委員として携わることができます。
- 各地域の公民館を巡回して生活習慣病等の予防のための講演を行い、予防医学を実践し、そのスキルを高めることができます。
救急医療
- 本院は二次救急医療機関ですが、常勤医が内科だけのため外科系の救急には携わることができないといっていいほど少ないです。しかし内科疾患として運ばれてきた患者さんが外科や脳神経外科などの他科の適応であることがしばしばあります。従って一般外来診療時だけでなく、ここ救急外来でもでも幅広く総合的な診断力が養えます。
- 日常の入院診療のみならず救急の現場でも気管挿管や中心静脈穿刺などの診療技術が学べます。
- 救急患者さんの家族は一般的にパニックになっており、患者さんおよびそのご家族に的確に病状説明を行い少しでも彼らの不安感を和らげるスキルと人格も形成できます。
検査
- 気管支鏡、上部消化管内視鏡、下部消化管内視鏡
- 腹部エコー、心エコー、頸動脈エコー、甲状腺エコー
- 胃透視、注腸造影など
他の病院との連携
- 徳島大学大学院総合診療医学分野、呼吸器膠原病内科学講座との強力な連携。
- 県立三好病院、町立半田病院との強力な連携。
- 希望に応じて上記病院に週1回研修が可能。
学習環境
- 三好郡市医師会や美馬郡市医師会の勉強会だけでなく、徳島市内の勉強会にも参加可能です。
- WEBカンファレンスも随時開催されています。
- 本院に各科の専門医を招き、教育講演を開催します。
研修の目標
一般目標(研修終了時点の目標)
地域の特性を理解し患者やその家族だけでなく地域住民と対話しながら総合診療医療を実践し、さらに呼吸器膠原病の専門医としての知識と技量を身につける。
行動目標(一般目標を達成するための評価可能な個別目標)
- 外来、救急、入院診療において、内科医として総合的に自立した診療を実践できる。
- 呼吸器膠原病の診療において専門医としての知識、技量を身につけることができる。
- 生物医学的問題のみならず、患者の心理、家族、地域の特性、社会背景に配慮した診療を実践できる。
- 患者の抱える問題点を列記し、必要な情報を迅速に収集することができる。
- 小児を対象とした予防接種や学校健診を通して予防医療を実践できる。
- 日常の大多数の健康問題の相談にのることができる。
- 在宅診療(在宅酸素療法、在宅人工呼吸器療法など)を実践できる。
- リハビリテーションを理解し、評価・実施できる。
- 地域住民の疾病予防と健康増進に関わることができる。
- 学生、初期研修医に1対1の教育ができる。
- 組織の運営に携わることができる。
- 研究発表を行うことができる。
1.外来、救急、入院診療において、総合診療医として自立した診療を実践できる
- 一般内科医として外来初診を自立して総合的に診療できる。
- 頻度の多い慢性疾患について、継続的で効率的な診療を実践できる。
- 地域住民がどのような疾患で苦しんでいるか理解でき、的確に診療できる。
- 救急患者を自立して診療できる。必要な場合には応援を頼むことができる。
- 内科入院患者の一般的診療を実施できる。
- 緩和医療を行うことができる。
- 二次救命処置を実施できる。
- 中心静脈穿刺を実施できる。
- 抗菌薬を適切に使い分けることができる。
- 必要に応じて適切な相手に相談、紹介することができる。
- 多職種と円滑なコミュニケーションをとり、リーダーシップを発揮できる。
2.呼吸器膠原病の診療において専門医としての知識、技量を身につけることができる。
- 膠原病の専門医としての外来入院診療ができる。
- 抗リウマチ薬、ステロイド、生物学的製剤等の適切な使用ができる。
- 呼吸器疾患の専門医としての外来入院診療ができる。
- 気管支鏡などの呼吸器関連検査を実施し、人工呼吸器の操作等に習熟できる。
- 最新の知見を習得できる。
3.生物医学的問題のみならず、患者の心理、家族、社会背景に配慮した診療を実践できる
- 患者と家族の問題に対して十分に傾聴し、その問題点を理解することができ時には解決することができる。
- 患者と家族の医療者に対する期待、予後に対する不安を明らかにすることができる。
- 患者と家族を地域社会や文化的背景を含めて理解・評価することができる。
- 患者や家族の問題に関して患者や家族と共通の理解基盤を見いだすことができる。
- 必要時に家族カンファレンスを計画し、基礎的なカウンセリングを行うことができる。
4.患者の抱える問題点を列記し、必要な情報を迅速に収集することができる
- POMR(problem-oriented medical record)に従いカルテ記載することができる。
- 生物医学的問題に限らず、心理、社会背景も含めた問題点を過不足なく列記することができる。
- 患者の問題解決に役立つ医学情報を迅速に入手することができる。
- EBM(evidence-based medicine)に則って得られた情報を吟味し、識別力をもって患者に適用することができる。
- 原著論文や臨床データベースを利用するにあたり必要な統計学の知識がある。
5.小児を対象とした予防接種や学校健診を通して予防医療を実践できる
- 予防接種の意義を理解し、その必要性や副反応を小児とその家族に説明できる。
- 予防接種の副反応が出現したとき適切に処置ができる。
- 幼児健診、学校健診などを通して、保育所、学校保健などの保健医療活動に主体的に参加できる。
- 障害を持つ小児の処遇を適切に行うことができる。
- 対象となる小児だけでなく、家族、学校、地域との関わりを考えることができる。
- 必要に応じて小児や保育士などに教育講演を実施できる。
6.日常の大多数の健康問題の相談にのることができる
- 高齢者の特性を理解し、診療を行うことができる。
- 認知症、骨粗鬆症、蓐瘡、誤嚥性肺炎、尿失禁、尿路感染症など高齢者に多い疾患・病態について熟知している。
- 検診異常に対して、二次検査と生活習慣に関するアドバイスを実施できる。
- 整形外科的健康問題をある程度診断し対処できる。
- 妊娠中・授乳中の女性の健康問題に関して、必要な場合には使用する薬を薬剤師と協議しながら判断できる。
- 婦人科的健康問題に関して、婦人科医への紹介の必要性を判断できる。
- よくある精神疾患や心の問題について評価を行うことができ、専門医への紹介の必要性を判断できる。
- 抗うつ薬、抗不安薬、鎮静催眠薬をそれぞれ使い分けられる。
- 皮膚科的健康問題に関して、ある程度診断し治療できる。外用薬を使い分けることができる。専門医への紹介の必要性を判断できる。
- 主治医意見書を記載できる。
- 介護保険で規定されている施設と連携できる。
7.在宅診療を実践できる
- 個々の患者において在宅医療の必要性を判断できる。
- 急性増悪期の症状を的確に診療し、その医療を実施できる。
- 在宅において緩和医療を実施できる。
- 在宅において看取りを実践できる。
- 在宅医療の主治医として機能することができる。
- 在宅医療に関わるチームと効果的に連携して診療できる。
- 在宅酸素療法を実施できる。
- 在宅人工呼吸器療法を理解し、関連する院外のチームと連携して診療できる。
8.リハビリテーションを理解し、評価・実施できる
- 徒手筋力テスト(MMT)、Brunnstrom stageを用いて、機能評価を行うことができる。
- Barthel index、機能的自立度評価表(FIM)を用いて、能力評価を行うことができる。
- 記憶障害、注意障害、遂行機能障害など高次脳機能を評価することができる。
- リハビリテーションを指示し、基本的なリハビリテーション指導は自ら実践できる。
- リハビリテーションチームと円滑なコミュニケーションをとり、リーダーとして機能できる。
9.地域住民の疾病予防と健康増進に関わることができる
- 地域の政治・経済・文化的背景や、健康に関するニーズを理解しようと努めている。
- 地域の予防・健康教育に関する事業を理解し、評価することができる。
- 地域の保健・医療・福祉システムと利用可能なサービスを理解し、評価することができる。
- 地域の健康に関する計画やサービスに参加し、多職種や住民と協力してその改善に取り組むことができる。
- 地域に出向き教育講演も実践できる。
10.学生、初期研修医に1対1の教育ができる
- 成人学習理論を理解している。
- フィードバックの技法を理解している。
- 5つのマイクロスキルを用いた教育技法を理解している。
- 学生、初期研修医向けに教育目的のセッションを実施できる。終了後に評価・改善するこができる。
11.組織の運営に携わることができる
- 医療保険制度と介護保険制度を理解している。
- 患者・家族の利便性を確保することができる。
- リスクマネジメント(医療事故、感染症、廃棄物、放射線など)を行うことができる。
- 財務・経営に関するマネジメントを行うことができる。
- スタッフの管理・教育を行うことができる。
- 地域の保健・福祉職員や他の医療機関スタッフと良好なチームワーク・ネットワークを形成することができる。
12.研究発表を行うことができる
- 日常診療や地域の問題点・疑問点を見いだすことができる。
- 先行研究を調査して、研究の必要性を評価できる。
- 指導医と相談の上で研究計画を立案できる。
- 研究計画を実行、遂行できる。
- 学会や研究会で発表できる。
募集要項
- 応募資格 平成25年3月以前に初期臨床研修修了者
- 募集人数 若干名
- 選考方法 書類審査及び面接・小論文
選考時期 随時
申込期間 随時
合否決定 随時 - 提出書類
(1)応募申込書 (ダウンロード) (2)履歴書(ダウンロード) (3)健康診断書
(4)医師免許証の写し
(5)保険医登録票の写し
(6)臨床研修修了登録証又は初期臨床研修修了(見込み)証明書